日々本 其の三百一「脱成長」

「未来のエネルギー」を考えて、到達した本が『ブータンで本当の幸せについて考えてみました。「足るを知る」と経済成長は両立するのだろうか?』(本林靖久+髙橋孝郎/阪急コミュニケーションズ)だったことを書いたけれど、その本のことをシンポジウム後の昼食の時に話しているうちに、脱成長という経済理論を実践して真の豊かさを求める動きがフランスから広がり、既に「脱成長に関する国際会議」が開かれているという話が、とある才女から出て来た。それで教えてもらったのがこの本だ。

『<脱成長>は、世界を変えられるか?』(セルジュ・ラトゥーシュ/中野佳裕 訳/作品社)

脱成長の思想はオルタナティブではなく、様々なオルタナティブが生まれるマトリスであるという。オルタナティブ=代案、マトリス=母胎。そしてこれまで善意の専門家たちから提案されている「オルタナティブな開発」「連帯経済」「フェアトレード」は、経済から抜け出し脱成長へ歩みだすのを回避する役割を果たしているという。

さらに、<持続可能な開発>の諸原理を主張することで、エクアドルのコレア政権やネベズエラのチャベス政権は、自然環境に対するリスクを最小化しながら、そして時にはリスクを無視しながら、自然資源の集中的な搾取と国土の工業化を推奨しているという。騙されるなということだろうか。騙されずに進めて行くべきは、<脱成長>による「贈与・幸福・自律の新たな社会へ」(サブタイトル)なのである。

とここまで順調に読み進んで来たのだけれど、温暖化による危険性と、ゴアの警告という話が出て来て、それを前提に次の話が進められている。著者は温暖化もゴアも全面肯定している訳である。ここで僕は躓いた。岡田正彦=『放射能と健康被害 20のエビデンス』(日本評論社)=も、池田清彦=『ほんとうの環境白書』(角川学芸出版)=も、温暖化していないと言っているのになぁ、と。

ここから先はちょっとぼーっとしながら読んでいる感じだった。なかなか頭に入ってこなくて、どんどん難しく感じてくる。ひとつひとつ納得の積み重ねで進んでいかないと、僕は楽しく本を読めないのである。という訳で、最後まで目を通してはみたが、これ以上書くことが今は思い当たらない。

日々本 第301回 針谷和昌)

hariya  2013年9月22日|ブログ