風間さんがやってきた。いい話をたくさんしてもらった。話を終えてファンへのサインも終わったあと、本の宇宙に並べてある『日本サッカーを救う「超戦 術」』(ベースボール・マガジン社新書)にサインをもらった。
風間さんはカフェの「ポジティブエール」というコンセプトを尊重してくれて、トークではだいぶソフトな口調となっていたが、日本では選手の悪いところを言 わない風潮があるけれど、言うべきことを言うということは決してネガティブではなく、本来それがポジティブだということではないか、とわれわれに疑問を投 げ掛けた。風間さんにそう言われると、そうですね、と思わず応えてしまう。
何がポジティブで何がネガティブか。それも含めて、わかったつもりになっている言葉や考え方に、いま一度「?」マークをつけて、改めて考えさせられてしま うのが、風間さんのトークであり、キャラクターである。常識を疑う、あるいは、物事の本質をもう一度考える、そんな姿勢を話の聞き手に知らないうちに強い る力が、風間さんにはある。
腕を伸ばしてみてと言って、体の正面に地面と垂直に伸ばした僕の手首をつかみ、肘の内側を風間さんが押す。なるべく肘が曲がらないように力を入れて、との リクエスト。それを最初は、手を握って力を入れてやってみる。次に、握手をする時のように指を差し出して力を入れる。すると、後者の方が肘が曲がらない。 風間さんは、手を握るという動きに、肘が曲がるという動きが連動しているからだ、と解説してくれる。
そういうことを理解して、体の使い方が変わると、サッカーが変わると言う。それは、この本に書いてあって前回この欄で触れた話、「ドリブル」をやってみた ら、長年の疑問が解けたという話にも通じていて、「でも、それをわかるにはちょっと遅かったけどね」という風間さんの台詞に、「遅かった」本人の僕も含め てみんな笑った。
風間さんは、通じる言葉と通じない言葉を、現場で試してみて選んでいるとも言っていた。そうやって生き残った言葉を駆使して、もっともっと本を書いて欲し い、とリクエストすると、「僕はあまり仕事をしたくないんだよね」と独特の照れの入った台詞をつぶやき、また僕らを笑わせてくれた。
(文・社団法人 本の宇宙)2010.05.27
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