日々本 其の七十四「空白」

『空白』(井上雄彦/SWITCH LIBRARY)

漫画『スラムダンク』『バガボンド』『リアル』の井上雄彦が、『バガボンド』を休載してから再開したところまでの間の数回のインタビューが収録されている。『バガボンド』を描いていない期間なので『空白』というタイトル。本屋で表紙を見掛けた瞬間、タイトルからすべてを把握した。「えっ? 描いてないことも本にするの? 何でも商品にする出版社の商売? …でも面白そう」と。休ませてあげてもいいのに、という思いと、でも休んでいる間に何をしていたんだろう? という興味が錯綜する。

井上雄彦は、浦沢直樹、しりあがり寿と並んで僕の中での現在の三大漫画家ではあるが、常に追っ掛けている訳ではなく、なかなか『バガボンド』の単行本出ないなぁ、ぐらいな感じ。だから以下の休載期間も、この本を読むまで詳しく知らなかったし、『バガボンド』が休載に入った10年12月から再開した12年3月までの間、『リアル』の連載は継続しているし、『pepita 井上雄彦 meets ガウディ』を出したり「東本願寺・親鸞屏風絵」などの活動などを展開していたということも本を読んで知った。

比較的早い段階のインタビューで「最終的なテーマは、身体だと思い始めています」(p28)という井上雄彦の言葉がある。この部分が立ち読みでパッと目に入り、本を買うことを後押しした。最近、僕自身、“身体”はかなり面白いと感じている。ちょっと重心の置き方や力の入れ方、意識する場所を変えるだけで、動きや体勢が大きく変わる。ちょうど今後のテーマは“身体”かなぁ、なって漠然と考えている最中だった。

休載期間の作者の活動と心境から、再開への流れを把握したので、おそらく秋頃になるだろう単行本の発行が待ち遠しい。この本を読み終えた時、ちょうど(たぶん再開3回目ぐらいが掲載されている)週刊誌も平積みされていたが、グッと我慢で単行本を待つことにした。

日々本 第74回 針谷和昌)

hariya  2012年5月27日|ブログ