日々本 其の五十三「打撃理論」

『インコースを打て 究極の打撃理論』(高岡英夫 松井浩/講談社)

久しぶりにワクワクしながら読んだ野球本。タイトル通り完全な“打撃理論”本で、ここまで理論を追求した野球本が過去にあっただろうか。あまり思い浮かばないので、たぶん、ほとんどないと思う。例えばこんなところにグイグイと惹かれる。

―ステップするとき腰を開くな
―バットは振り出すのではなく引っ張り出せ
―かかとでステップする
―左腕の抜きと右腕の払い
―グリップを内側から出すには下半身を使う
―右肩より先に右膝と腰を一緒にパッと回す
―ヘッドを返さずにバットをちょっと滑らせる
―ボールの内側を打つ
―ボールの内側にバットの芯を当てていく
―ボールの内側を打つ意識が強すぎるとバットのヘッドが下がりやすくなる
―バットを内から、と同時に上からというイメージで入れる

すべて「インコースを打つ」ための秘訣である。往年のプロの強打者・巧打者たちの言葉。いずれも、深い。

―背筋を伸ばすと無駄な力が抜けてリラックスできる
―股関節の上に体幹が乗っているようなイメージ
―下腹部に少し力を入れるようにするとリラックスできる
―太腿の内側と裏側を長い時間をかけてさする
―バットの振りで、体の回転を、脚、腰、肋骨、肩、グリップと、正しく順番に止める
―それによって体の各部分が次々にスピードを加速して最終的にバットが最大スピードをもらう
―全身がゆるんでいるというのが野球界でいう「センス」
―肋骨や背骨、前腕のゆるみ
―全身がゆるゆるにゆるんでいるか?体の真ん中を天地に貫く中央軸がしっかりしているか?
―背筋が上手に伸ばせると背骨周りの筋肉がほぐれてゆるむ


以上は、打撃のための全般的な体の使い方のコツ。そのための「視認力アップのためのゆる体操」と「肋骨と背骨をゆるめるトレーニング」という具体例も載っている。これ、ちょっと、しばらくやってみようと思う。人間の体って本気で取り組んだら死ぬまで飽きないんじゃないだろうか、そういう気にさせられる。

今回の本はちょっと専門的というかマニアックというか、あらかじめ対象者を絞って企画されたものだと思う。出版されてから3年以上も目に止まらなかったこういう本が、パッと目に入ってきた書店は、僕が勝手に「本の森」と読んでいる大きな書店である()。深い森の中で深い言葉の群を見つけた、そんな感じだ。

日々本 第53回 針谷和昌)

*:MARUZEN & ジュンク堂書店 渋谷店(東京・渋谷 東急百貨店本店7F)

hariya  2012年4月09日|ブログ