ことしの本棚46『3.11クライシス!』

  
『3.11クライシス!』(佐藤優/マガジンハウス)
『これからを生きる君たちへ』(新潮ムック/新潮社)
『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』(広瀬隆 藤田祐幸/東京書籍)
『放射線利用の基礎知識』
(東嶋和子/講談社ブルーバックス)
 
ほぼこの4冊を同時に読んだ。順番からいうと先ず「校長先生たちからの心揺さぶるメッセージ」という枕詞がタイトルについている『これからを生きる君たちへ』。小中高大、被災地と全国のそれぞれの学校の校長先生が卒業式で語った言葉が集められている。
 
立教新座中学・高等学校、岩手県釜石市立釜石小学校、岩手県宮古市立愛宕小学校、岩手県山田町立織笠小学校、岩手県釜石市立釜石東中学校、宮城県本吉郡南三陸町立志津川中学校、東京都港区立青南小学校、東京大学、一橋大学、大阪大学、長崎大学。
 
・「巣立ちゆく立教の若き健児よ。日本復興の先兵となれ。」
・「私たちはいつまでも皆さんの応援団です。」
・卒業式の前日の震災で、帰宅が許されない生徒たちは教室がそのまま避難所となり、真っ暗な教室での歌のエール交換があった(卒業生による歌声の後、二年生の教室から「送別の歌」の歌声)……
 
僕はこの本を買ってすぐ、書店の外にある待合スペースの椅子に座って読み始めた。熱いものがこみ上げてくる。我慢したけれども、左目から一滴だけ、本の上に溢れて落ちた。いま改めてこれを書くために読み直しているが、人を気にする必要がないので、今度はこみ上げてくるものを止められない。
 
ムックだからこんなに早く本に出来るのだと思うのだが、『3.11クライシス!』は単行本だけれども早かった。著者がネットや新聞、雑誌に書いたものを急遽集めて出版した、そんな感じの本である。著者は同じ話をいろんな媒体に書いているので、明治天皇の和歌や三浦綾子の小説『塩狩峠』が繰り返し出てくる。その繰り返しの頻繁さに目をつぶれば、次々と起こる問題に対して、著者はすぐさま的確な意見を書いていて、それはなかなか出来ないことだと感じる。とくにロシアやアメリカに対しての外交面での対応に関しては、さすがと感じる意見が多い。
 
『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』は11年前に出て、この4月に第5刷が出たばかり。圧倒的なデータが説得力を持つ。広瀬隆はずっと警告していた訳だが、人間は嫌なことには目をつぶりたいから、この本もこれまでそんなに売れなかったんだろうなぁと思う。『放射線利用の基礎知識』も5年前に出て、この4月に第4刷となって出ている。身のまわりの放射線から医療利用まで、まだざっと見ただけだがわかりやすい。
 
情と理論と圧倒的なデータと科学。いろいろな切り口があるが、この未曾有の事態には、さまざまな角度からアプローチし、意見を出し合い、現実を直視して行動していかなければならないと思う。若くはないが、僕らも日本復興の先兵とならなければ。

 
ことしの本棚 第46回 針谷和昌)

hariya  2011年5月16日|ブログ