ことしの本棚30『二酸化炭素温暖化説の崩壊』

新聞の広告を見て、そうだこの本があった、と思い出し、本棚から引っ張りだして、原発のところを中心に読んでみた。
 
『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(広瀬隆/集英社新書)
   


 
地震のあと、会社の本棚から引っ張りだしてきて、もう一度目を通したのは『原発とプルトニウム』(常石敬一/PHPサイエンス・ワールド新書)『新版 原発を考える50話』(西尾漠/岩波ジュニア新書)だったが、その後、原発の話を人としているときに無意識に引用しているのは、広瀬隆の上記の本からだったと改めてわかる。
 

  
原子力安全・保安院の人が記者会見でよく使う「パラメータ」というのは何だろう?と思ってぱっと開くと「係数(パラメーター)」と出ていたりする。そういう点でも役に立つが(と言ってもカタカナが漢字になっただけで理解が深まった訳ではないが)、僕がここに記しておきたいと思うのは次の3点。

 
…沸騰水型における熱の流れ…熱エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギーへと変換がおこなわれるので、原子炉で生まれた熱エネルギーの三分の一しか電気にならない…このあと、水蒸気に残った三分の二の熱を海に捨てている…この捨てられる熱水を温排水と呼んでいる…そればかりか、原発は東京や大阪の大消費地から遠方の地域に建設されてきたので、送電線によるエネルギー・ロスが大きく、〆めて70%のエネルギーを捨てている。最もエネルギー効率の悪い発電所である。…「原発は発電量の二倍の熱量で海を加熱している」と言うべき重大事…
   
…海への放射能の放流は、寿命の長い放射性物質が魚介類に取りこまれ、死骸が海底土壌に沈殿し、再び海水に放出されるサイクルによって、その場所が半永久的に汚染海域になる。これらの魚介類にタンパク質を依存している日本人にとっては、最もおそろしいものが放射能である。…
   

…この三枚のグラフを見ていると、実は面白いことに色々気づくはずである。火力と水力は、立派な発電所を持ちながら、大部分が休んでいるのだ。…注意しなければならないのは、この2008年度の原発の稼働率が60%という低い数字で、これでも動かせる原発をすべてフル運転しての悲惨な現実だということである。…
   
最後の文章のところには、「2008年度の発電実績(設備利用率)」という図があって
・水力:運転18.9%(最大5,000万kw弱)
・火力:運転50.7%(最大14,000万kw弱)
・原子力:運転60.0%(最大5,000万kw)

というデータが読み取れる。
 
巷では早くも、それでも原発は必要、いかに安全な原発をつくるか、などという意見も出て来ている。まだ収拾がついていない状況でそれを言い出すことには、大いに疑問を感じる。そして(いつになるかわからないが)事態が落ち着いた暁には、本当に科学的に多くの人が理解出来るような情報を明らかにすること、そして人々が原発の功罪を真に理解すること、先ずはそこから始めるべきではないか思う。

 
ことしの本棚 第30回 針谷和昌)

hariya  2011年3月26日|ブログ