ことしの本棚5『野茂英雄』

『野茂英雄 – 日米の野球をどう変えたか』(ロバート・ホワイティング/松井みどり 訳/PHP新書)

野茂英雄。この名前自体が「野球」「(長嶋)茂雄」「英雄(えいゆう)」の要素を含んでいて、まさに野球のスターになるために生まれてきたようだと、以前どこかに書いてあった。確かにその通りで、日本の野球界に別れを告げメジャーリーグに向った直後のバッシングも凄まじいものがあったけれ ど、利害関係のある球界のお年寄り以外は、過去の栄光を捨て本場に挑戦する野茂を応援していたんじゃないかと思う。

メジャーで新人王を取り、日本に凱旋帰国した秋のメジャーvs.プロ野球の試合で野茂が先発。1番イチローと対戦、いよいよ第1球というときに、 僕は3塁側スタンドで見ていて涙がボロボロ出てきたことを思い出した。あの頃は結構アメリカ西海岸に行っていたので、チャンスを伺ったのだけれど なかなかタイミングが合わず、ドジャースタジアムでの野茂の勇姿を見ることはできなかった。僕にとってメジャーリーガー野茂をライブで見たのは、この日米野球の1回だったので、とくに忘れられないシーンとなった。この対戦、確かイチローがセンター前にゴロのヒットを打ったと思う。

この本から野茂を中心に、イチロー、松井、そして他の日本人メジャーリーガーのアメリカでの評価がよくわかり、野茂と松井の評価は日本でのそれの上を行っていると感じられる。日本人メジャーリーガー録としての読み応えは充分。周辺情報もいろいろ出ていて、僕が手に入れてみたいなと思ったの は、マーヴィン・ハムリッシュの『ゼアズ・ノーワン・ライク・ノモ』という曲。調べてみるとこのハムリッシュというNY出身のアメリカ人は、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞、ピュリツァー賞をすべて受賞している作曲家。そう言う人は他に1人(トニー・ロジャース)しかいないらしい。

もうひとつ書き留めておきたいなと思うのは、日本野球に関する英語サイト。
japanesebaseball.com(マイケル・ウェストベイ)
japanbaseballdaily.com(ゲイリー・ガーランド)
japanball.com(ボブ・バベシ)

試しにちらっと覗いてみたが、japanball.comのトップには長嶋監督の胴上げシーンの写真などが使われている。



話は変わって、サッカー遠藤保仁選手の『信頼する力』と一緒に読みたいと書いた鄭大世選手の『ザイニチ魂!』も読み終えた。帯にはワールドカップ 初戦の国歌演奏で号泣する鄭選手の写真。この時の心境が書いてあって、夢がかなったという感動、国を代表して戦えるという誇りと喜び、そして親しい人への思い、あえて整理をするとこういう胸の内だったそうだ。そういう逸話も含めて、鄭選手の純粋さや正直なところが最初から最後まで一貫している。大人になっても大泣きできるっていいことだと思うけれど、よく泣く自分も肯定しているように聞こえます、ね(笑)。


(ことしの本棚 第5回 針谷和昌)
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hariya  2011年1月23日|ブログ