日々本 其の三百三十二「流れ その3」

『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』(エイドリアン・ベジャン& J・ペダー・ゼイン/柴田裕之 訳/紀伊國屋書店)の「第四章 進化を目撃する」はほとんどがスポーツに関する「流れとかたち」の話。この章だけ特別に理解度が上がって、いろいろと考えることができました。

著者はルーマニアのもとバスケットボール代表選手。そのことがこの章でわかり、そのことがこの章を面白くしているんだということもわかります。その著者がコンストラクタル法則を発見し、その上でスポーツを見てみると「スピードスポーツは、地表を高速で動ける運動選手を見つけ出し、トレーニングし、その世話をする流動系」ということになるそうです。「この流動デザインは、より速い選手や新記録を生み出すことで進化し、目に見えて向上する」。

著者は100m走と水泳100m自由形の新記録樹立者を調べてみて、「新しい勝者は前の勝者より体が大きい傾向にある」と言います。「体が重くて背の高い者が速いのだ」。「速度は質量の六分の一乗に比例して、あるいは慎重の二分の一乗に比例して増加する」。なので、将来、速さを競う競技は体重別にならざるを得ないのではないかと予測しています。

途中「黒人は白人よりも身体密度がおよそ一パーセント高い」という話が出て来たりしながら、「身長が同じ走者であれば、重心が高い人ほど有利だ。体重がより高いところから落ちてくるため、より速く走る力が得られる」と言い切ります。足が長い方が足が速いという理論をつきつけられて、それじゃあ日本人はかなわないじゃないか、と思った瞬間に、次の「水泳の場合、重心が低い泳者が有利だ」という話が出て来て、昨今の「水泳ニッポン」の活躍ぶりの要因のひとつはここにあったのか、と逆に喜ばせてくれます。

そうなると2020東京オリンピックに向けて、コンストラクタル法則を使って日本人に合ったスポーツを見極め、その種目を突き詰めて行くのもありなのでは?とも思いますが、それ以外の競技でも実際に頑張って成績を残している選手もたくさんいます。やりようなのか?でも最後は法則が勝つのか?あるいは将来的に体重別という救いのルールが出て来るのか?

どうなるかわかりませんが、スポーツの良さに“チャレンジ”があるとすれば、身体的に不利なスポーツにも果敢に挑戦していくこともまた、とても大切なことなんだということだけは、よくわかります。勝つことだけがすべてではないということを、ソチの浅田真央選手が見せてくれました。いや彼女は最後の最後に自分に勝った訳ですから、他人に勝つことだけがすべてではない、と言うべきかもしれません。コンストラクタル法則とスポーツ、もう少し時間をかけて深く考えてみたいと思います。

日々本 第332回 針谷和昌)

hariya  2014年3月07日|ブログ