日々本 其の二百三十五「ちいさこべえ」

『ちいさこべえ いち』(望月ミネタロウ/小学館)

「ちいさこべ」という言葉がこの第1巻の最後から2ページ目に出て来て、「ちいさこべ?」でこの巻が終わっている。この漫画のタイトルは「ちいさこべえ」なので「え」が足りないのだが、「え」はおまけなのだろうか?それとも変化形なのだろうか?…ということで秋にでるという(バカボンド第36巻も今秋出るそうだが)第2巻に期待したくなる。ちいさこべ(え)って何だろう?

「いち」つまり第1巻は淡々と進む。隠しているけれど垣間見える作者の熱情を抑えて、登場人物の誰もがそれを抑えて、話は進む。出て来る女性はみんな美人。どこか江口寿史を彷彿させる女性の容姿。以前から読んでいるが、描く度に上手くなってくるタイプの漫画家。もう第10巻になるのにどの人とどの人が同じ人なのか途中でわからなくなってくる『進撃の巨人』とは対照的だ(失礼、でもそれを補って余りある迫力が 進撃の巨人 にはある)。

先日、とある人から『キャプテン翼』の高橋陽一さんはフットサル漫画を描かないだろうか?と問い掛けられた。高橋先生も素晴らしいけれど、この望月ミネタロウがスポーツを描いたら、かなり“好い”のではないだろうか。

淡々と進む とは言っても火事で主人公の両親が死んだりしているので、冷静に考えるとかなり劇的な展開。淡々としているように感じるのは、画の力による。この漫画が作者の2年半ぶりの最新作ということだけれど、ここからエンジンがかかって、作者の絶好調で多作な時代がやって来ないだろうか。作者が乗りに乗って筆が止まらないような、『バタアシ金魚』状態の作品を再び読んでみたい。

日々本 第235回 針谷和昌)

hariya  2013年5月05日|ブログ