日々本 其の二百二十二「死ぬのが怖い」

『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』(前野隆司/講談社

なぜ「死ぬのが怖い」のか?これまで、何回も考えた。毎回、中途というか、あまり深まらないところでわからなくなってきて、そのままになっていた。なので今回、この本のタイトルを見て飛びつき、より深く考え、それが腑に落ちたらいいなぁと、最初から最後まで期待して読んだ。

結論は“落ちる”近くまでいくのだけれど、落ち切らない。納得しきれないのは、自分が死んだら何もなくなる、ということの無力さを、自分自身認めたくないからだということを、何となくわかった気がする。「自己保存本能を超越」することがなかなかできない。

読み終わって感じるのは、著者の前野先生(慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)とお話してみたいという気持ちだ。著者と話をしたいという読後感は、結構珍しいが、お会いして僕が訊きたいことは2つある。例えば猫はとても幸せに見える。人間から知性を取って猫並みになれば、僕らは格段に幸せになれるのだろうか。これが先ず1つ目。そして、悟るとは“ゾーン”に入り続けることではないか?これが2つ目。

「「死」に関連する学問分野には、脳科学、心理学、進化生物学、工学、宗教学、哲学、社会学、医学・カウンセリング学など、いろいろとある。」とある。「死」に関連するシンポジウムを将来的に一緒に開こうと、とある人と約束しているのだけれど、学問分野が考えていたよりも範囲が広い。それだけの広い範囲、さらには仏教も含めて考察し、著者は「心は幻想」だと言う。幻想でありながら今をリアルに生きる。この感覚もちょっと難しい。この本は、少し時間を置いて、もう一度最初から読んでみようと思う。

日々本 第222回 針谷和昌)


hariya  2013年4月07日|ブログ