日々本 其の百七十六「修造」

『Number』818(文藝春秋)

松岡修造が面白い。「心が震える99の言葉。」を特集した2012年を総括するナンバー818号の、「私たちも泣いた名場面。」というコーナーに登場。上段で高橋尚子(元マラソン選手)、下段で松岡修造(元テニス選手)が語っている。

松岡修造は「今夜は彼を近くに感じた」というロンドンオリンピック水泳男子100m平泳ぎで世界記録で金メダルを獲得したキャメロン・ファンデルバーグ選手(南ア)の言葉を先ず挙げている。彼というのはファンデルバーグの親友で4月に急逝した金メダル候補アレクサンドル・ダーレオーエン選手(ノルウェー)のこと。金メダルを取った瞬間、コースロープに乗って手を挙げた時、オーエン選手が笑いながら話しかけてきたという。その時の、天を指差しもう一方の手を額に当てた、笑顔のファンデルバーグの写真も載っている。

そして吉田沙保里選手(女子レスリング)の「ゾーンって何ですか?」という言葉。吉田選手はゾーンそのものを知らず、「楽しんでやれば自然に集中できますよ」と言ったそうだ。

これらの言葉を引き出し、そしてそれらをクローズアップして1番目と2番目に持ってきた松岡修造のセンスが光っている。今まで彼のことを“とびきり元気な応援団長”という目でしか見て来なかったけれど、これからは書くものや話すことにもっと注目してみようと思う。選手時代はウィンブルドンのベスト8を経験。天は二物を与え、名スポーツライターになる資質充分ではないか。

日々本 第176回 針谷和昌)

hariya  2013年1月03日|ブログ