日々本 其の百四十四「書店の棚 本の気配」

『書店の棚 本の気配』(佐野衛/亜紀書房)

この本の気配に誘われて、パラッとめくってみた。面白そうな気配。書店の棚からレジへ。本が醸し出す気配に違わず、中身は抜群だった。

先日『松丸本舗主義』にはヒントがたくさん潜んでいると書いたが、僕にとってこの本には、それ以上のものがあった。読んでいると次から次へとアイデアが溢れ出てくる。与えられたインスピレーションの量は、これまでの本の中でいちばん多いのではないだろうか。答えを導きだすヒントがたくさん詰まっているので、次から次へと浮かんでくるアイデアを、余白に書きまくった。

著者は東京・神保町の東京堂書店の元店長。本というもの自体の考察や、棚づくり、イベント、作家との交流などのエピソードが満載で、あぁ、僕も本屋をやってみたいなぁ、と思わず心の中でつぶやきながら読み進める。本屋としての選書の心構え、天候による本の売れ行きから始まって、勉強になることがたくさん書いてある。

そして、店内の本の検索システム、未来の本屋の形、電子書籍の発展形、新しい棚づくり、出版社と本屋のコラボレーションによる新しい本の形などなど、次へ進むためのアイデアが、読んでいる僕の頭の中にどんどん湧き上がってくる。よっぽど相性が良いのか、こんな本は珍しい。『装置と間際』(インパクト出版会)、『推理小説はなぜ人を殺すのか』(北宋社)『世紀末空間のオデュッセイア』(北宋社)という既刊の著者の本も読んでみたい。

日々本 第144回 針谷和昌)

hariya  2012年10月31日|ブログ