日々本 其の百二十一「ビアンカ」

『ビアンカ・オーバースタディ』(筒井康隆/星海社)


「―それは、2010年代の『時をかける少女』。筒井康隆、ライトノベル始めました。」という帯。帯の裏側は「文学界の巨人・筒井康隆の最新作は本気のライトノベル!筒井康隆×いとうのいぢ 文学史上の一大事件を読撃せよ。」。ライトノベル自体がわかっているようでよくわからなかったので、調べてみると「表紙や挿絵にアニメ調のイラストを多用している若年層向けの小説」ということ。

最近、なかなか新作が出ないと思っていた筒井康隆が、新しい境地に挑戦していたということで、『時をかける少女』も名作だったし、中高生用の小説だろうとメドをつけて読み始めようとしたが、ちらちら見える各章のタイトルに必ず「スペルマ」という言葉がついていて、ちょっとそうではないのでは?の予感。

結果的に、そうであったようなそうではなかったような。「この高校でいちばん美しい、いちばん綺麗な女の子」である主人公が、色白で睫毛が長く黒眼ぱっちりな男の子や、背が高くて美しくその美しさはまるで悪魔みたいな女の子、そして「姉のわたしでさえうっとりするほどの美少女」である妹たちと、とんでもない実験や旅をする話。現代の行き着く先の予言もある。ライトのようでいて、ヘビーな小説。

作家本人があとがきに書いているが、筒井康隆はもう77歳。この歳にしてこのライト&ヘビーノベル、流石である。さて次作は?

日々本 第121回 針谷和昌)

hariya  2012年9月07日|ブログ