もともと「サッカー 本の宇宙」には、『6月の軌跡』の文庫本を置いていた。ある日、イベント出演の打合せにカフェにやってきた増島さん本人から「文庫よりこっちの方がいいでしょ。日比野さん（克彦）が装幀してくれたんだけれど、それも珍しいことだし」と単行本を手渡された。

確かに文庫本は日比野さんの装幀ではないし、この日比野さんのイラストも含めて『6月の軌跡』は“作品”になっているのだと思う。その日比野さんに、ワールドカップ・フランス大会で日本第1戦が行われる直前のトゥールーズのスタジアムの前で紹介されたのが、増島さんだった。

『6月の軌跡』（増島みどり/文藝春秋）

“’98フランスW杯 日本代表39人 全証言”というサブタイトルがついている。岡田武史（日本代表監督）、森島寛晃、中西永輔、服部年宏、小野伸二、小野沢洋（日本サッカー協会広報部長）、井原正巳、城彰二、並木磨去光（アスレティックトレーナー）、市川大祐、山口素弘、呂比須ワグター、北沢豪、岡野雅行、ルイス・フラビオ（フィジカルコーチ）、徳弘豊（アスレティックトレーナー）、斉藤俊秀、寺本一博（アシックス）、名波浩、秋田豊、川口能活、平野孝、小野剛（ヘッドコーチ）、野呂幸一（シェフ）、中山雅史、名良橋晃、相馬直樹、小島伸幸、伊東輝悦、楢崎正剛、麻生英雄（エキップメント）、浦上千晶（栄養アドバイザー）、田中博明（アスレティックトレーナー）、中田英寿、小村徳男、福林徹（チームドクター）、大仁邦彌（日本選手団団長）、ジョゼ・マリオ（GKコーチ）、鈴木善之（コック）、岡田武史（日本代表監督）…延べ40名、岡田監督が最初と最後の2回出てきているので、合計39名へのインタビュー。

僕は選手以外に（上記カッコがついて肩書が書かれている）これだけの人々がかかわっているということを初めて知ったし、またインタビューが時系列に載っているので、それぞれがそれぞれのタイミングでどんなことを思い、考えていたか、同時体験しているような気持ちで読める。そしてこの39名には最後にメンバーから外された市川選手も北澤選手も入っているが、唯一入っていないのが三浦知良選手なのである。

その後も代表的な作品を次々に著してきた増島さん。その中から「サッカー 本の宇宙」には以下の3冊を含めて計4冊がラインアップしている。

『ジーコ セレソンに自由を』（増島みどり/講談社）
『In His Times 中田英寿という時代』（増島みどり/光文社）
『サッカーのない人生なんて！』（増島みどり/ベースボール・マガジン社新書）

さて、来る28日(金)のカフェイベント「TETSU CAFE 第二夜」では、柱谷哲二さんがホスト役を務め、『6月の軌跡』にも登場している山口素弘さんをゲストとしてお迎えする。そこに増島さんがコーディネーターとして加わっての鼎談となる。いずれも日本を代表するサッカー選手2人から、増島さんがどんな話を引き出してくれるのか。楽しみな一夜だ。

（文・社団法人 本の宇宙）2010.05.21