日々本 其の五十九「温暖化神話」

『「地球温暖化」神話 終わりの始まり』(渡辺正/丸善出版)

武田邦彦(中部大学教授)のブログは毎日更新されている。武田教授はいろいろ言われているが、継続性がある人を僕は基本的に信じている。ブログには、空気中の放射線量が多くなった、瓦礫処理が原因かもしれない、などの情報もあって、なるべく読むようにしている。そして3/24のブログでこの本を紹介していた。「この本を読まれて温暖化を信じる人はいなくなるでしょう」という書き出しを読んで、すぐに買うことにしたのだが、なかなか本に行きあたらず、ようやく“本の森”(第53回 最下段参照)で見つけた。

ロンボルグ()の本などを続けて読んでいた頃には、温暖化自体が怪しい、と僕も思っていたが、どうやら温暖化は事実らしい(というのを比較的最近読んだ信頼できる誰かの本に書いてあった=その誰かを失念)という方向にほぼ気持ちが行きかけたとき、いやいや、やっぱり「温暖化は神話です」、それが最終結論です、というのだから買わずにはいられない。

CO2排出を減らすため日本では20兆円が使われたが、それによって減った形跡はない、という指摘から始まる。そして地球温暖化問題=人為的CO2脅威論は

(1)大気中のCO2は主に人間活動が増やす
(2)そのCO2が地球を暖めている
(3)地球の平均気温が上がると悪いことがあれこれ起きる

から成り立っているが、この3つのうち1つでも誤りならたちまち崩壊する、と続く。なるほど、その通りだ。そしてもともと仮説に過ぎないというこの三本柱の真実が、次々に暴かれて(と書くと言葉が悪いがまさにそういう勢いで進んで)いく。

石炭はこのまま使い続けても100-200年もつ
世界のCO2排出量は「堀った化石資源の量」で決まる
日本のCO2排出量は世界の4%
CO2は目に見えず一緒に出た水蒸気が小さな水滴になり光を散乱して白く見える
大気のCO2濃度は着実に増え 390ppm
せまい会議室や教室内はたちまち 1000ppmを超える
3ヶ月航海の潜水艦内 8000ppm、3年間の衛星内 5000ppm
全世界の温暖化対策費は100兆円を超えるが効果なしの大失敗
50万種と言われる現生植物の先祖は今の2-6倍高いCO2濃度に2-3億年間も適応

ここまでを基礎知識とすると、CO2が増えることで叫ばれていたデメリットが実は…という話がここから。

1958年~CO2濃度が80ppm上がって田畑の作物の一部は収量が1割増え、飢餓人口の現象に貢献
いま地球全体で緑がじわじわ増えている
北極圏カナダでは50%増、サハラ砂漠南部、アマゾン流域も快調に緑化中
中国では数千年来、日本でも漢字を輸入して以来、温暖という言葉を人々はプラスのイメージで使ってきた
米国の地続きの48州の気温は横ばい、南極圏は冷え気味(下がってきている)
1900~2011年の間、CO2排出が増え気温が上がった期間は1/5~1/6(70年代末-97年)
その他自然に下がったり(00-10年)急上昇したり(10-40年)CO2が激増したのに横ばいか下がり気味(40-70年代,98-11年)

イギリスの政治家モンクトンが映画『不都合な真実』を精査して07年10月に35のミスがあると指摘した…そのミスがこれでもかと挙げられている。

・温暖化で南極とグリーンランドの氷が融け海面が6m常勝 ・温暖化で太平洋の島々水没 ・温暖化で海の熱塩循環が止まり欧州が氷河期に突入 ・数十万年前の間氷期にはCO2が温暖化を進めた ・温暖化でキリマンジェロの雪が融けている ・温暖化でアフリカ大陸中央部のチャド湖が干上がった ・温暖化で05年のハリケーン・カトリーナが発生 ・温暖化でシロクマが死んでいる ・温暖化でサンゴが白化している ・CO2濃度が100ppm増えれば厚み1マイルの氷河が融ける………

まだまだたくさんある。温暖化によるハリケーンの強大化。洪水の増加。竜巻の増加。北極の解氷が融け昇温加速。グリーンランドの氷河が、ヒマラヤの氷河が、ペルーの氷河が、全世界の氷河が融けて(減って)いる。サハラ砂漠の乾燥化。蚊が高知へ。熱帯病が広まる。西ナイルウイルスが米国に広まる。CO2は大気汚染物質…….さらにまだまだあるが、これらはぜんぶ“ミス”つまり間違いであり嘘なのである。

ストックホルム大学の海水準の権威メルネル教授が論文や解説記事、インタビューで書いたり言ったりしていることは次の通り。

・モルディブの海水準は40年間変わっていない ・ツバルもバングラディッシュも同様 ・観測データから推定される2100年の海面上昇は全海洋平均で20cm上昇~10cm低下(IPCC予測は28~58cm上昇)

米国のリーズン財団が2011年9月に1900年以降に世界で起きた自然災害の被害をまとめているのが以下の数字。干ばつ、洪水、暴風雨を合わせ、人口100万人あたりで以下の様に激減。気象関係の被害はかすかな気温上昇などではなく、専ら防災で決まる。

・1920年代=241名 ・1930年代=208名 ・1940年代=156名 ・1950年代=71名 ・1960年代=50名 ・1970年代=14名 ・1980年代=14名 ・1990年代=6名 ・2000年代=5名

このあたりまでで、まだこの本の約半分。後半はもう少し軽めにピックアップしてみたいが、それにしても温暖化というのは、単に危機を叫ぶだけでなくその対策までを含めて考えられた良く出来た物語だと言える。これが“騙し”だとすると、騙す方はかなり頭がいいと言うか、人間の「信じたい」という気持ちと行動体系をよく理解していて、侮れない。

こういう人たちの本性を、いつか見抜けるようになるのだろうか。よっぽど肝に銘じておかないと、何度もやられちゃう気がする。そうならないために、組織の権威にも惑わされないようにしなければ、と思わせられる例を次回に。

日々本 第59回 針谷和昌)

(*): ビョルン・ロンボルグ
『地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す』
(ソフトバンククリエイティブ)

『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』(文藝春秋)

hariya  2012年4月25日|ブログ