日々本 其の四十三「プロ野球」

Jリーグのシーズンがスタートし、間もなくプロ野球のシーズンも始まる。日本のプロスポーツの季節が一気にやってくる。子どもの頃は野球に没頭していて、自分でも野球をやりながら、プロ野球の大ファンだった。ファンというよりマニアに近い。王選手の記録は殆ど頭の中に入っていたし、打席毎にラジオの実況を録音していたし、打撃成績のノートを作ったりしていた。試合も実際に年間数十試合観に行った。12球団のキャンプを巡ったりもした。熱中するとどんどん突き進む、というのはあの頃からの性分である。

そんな熱もいつやらか冷めて、TVでも実際の現場でも、プロ野球を観るよりメジャーリーグを観る方が多くなり、長い間プロ野球ファンと呼ぶにはほど遠い状態だった。今年はいろいろな要素が噛み合って、またプロ野球への関心が高まってきた。それでしばらくのブランクを埋めたい期待を込めて、この本を読んだ。

『プロ野球 球団フロントの戦い』(工藤健策/草思社)



プロ野球にもビジネス感覚が入って来た。単純に言うと、昔のプロ野球と今のプロ野球の違いはそこだ、とこの本を読みながら思う。「最初の10年で選手がプロになり、次の10年で監督がプロになった。最後に残ったのは経営者のプロ化問題だ」というのが最近出たサッカービジネス書の広告コピーだけれど、野球においても経営のプロ化、野球のビジネス化が、少しずつ進んで来たのが現代野球だと言える。

では、経営のプロ化、野球のビジネス化とは、具体的にはどういうことなのか。最近のプロ野球はユニフォームやヘルメットが広告媒体となってきているが、それがそうかと言えばちょっと違うだろうと思う。野球をいかに魅力的に見せるか、が第一にあって、それをとことん追求した結果がビジネスへと繋がっていくのだと思うし、何でもかんでも広告媒体にすればいいというものではない。そういう意味で、この本からはプロ野球チームのそれぞれの試行錯誤の現状が読み取れるし、どのチームにも長所、短所があり、それは責任者や担当者のキャラクターにも大きく左右されている、ということもわかってくる。

「アマチュア」の語源は「愛」だということを、この間友人に教えてもらった。これまでのプロ野球はプロと言いながらも、その土台はまさにアマチュア精神によって支えられて来ていたのではないだろうか。アマチュア精神があってこそのプロの技量、プロの環境、プロのサービス。始めに野球ありき、であり決して、始めにビジネスありき、ではないというところがポイントだと思う。個人的には、「技量」の追求はもちろんのこと、スタジアムの造作を中心とした「環境」の整備が最大のファンサービスであり、従ってそこにビジネスに繋がっていく鍵があると感じている。

日々本 第43回 針谷和昌)

hariya  2012年3月15日|ブログ