ことしの本棚64『三陸海岸大津波』

今回の大地震では、明治三陸地震の犠牲者22,000人を上回ることはほぼなくなった、というニュースが流れたことをきっかけに、ある記事をクリッピングしたままにしていたことを思い出した。

「女の一生 津波3度」というタイトルでちょっと前に、朝日新聞(夕刊)に載った記事。78年前の昭和三陸地震津波、51年前の昭和チリ地震の津波、そして今回。岩手県大船渡市の山崎一恵さんは、88年前の関東大震災にも遭遇しているという。年齢が88歳と出ているので、つまり生まれた年。

なぜこのクリッピングを取っておいたかというと、ある本を読んでいる最中にこの記事が載ったため。その本とは…

『三陸海岸大津波』(吉村昭/文春文庫)



三陸海岸は、明治29年、昭和8年、昭和35年に大津波に襲われている。西暦で1896年、1933年、1960年。大津波には、共通した前兆があるそうだ。

井戸水の減少、渇水または混濁/沿岸各地での大豊漁/海上での発光/ドーンという音響/津波の前の異常な干潮

釜石へ行った時に「津波浸水想定区域 ここまで」という標識が、いろいろなところにあった。いずれも坂の途中で、だいぶ上ってきたなというところで、今回の震災がなければ、こんなところまで本当に来るの?と思えるような場所だった。そして実際、今回もここまで津波がやって来たという。

人間の“忘れる”という能力は素晴らしいが、忘れていいことと覚えておくべきことがあって、忘却と記憶をなるべく上手く使い分けられるようにしなければならないということだろうか。それには常日頃から感性を磨いておくしかない。とても難しいことだけれど…。

ことしの本棚 第64回 針谷和昌)

hariya  2011年7月15日|ブログ